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アクティブラーニングが発達を変える、教育を変える ―キャリア教育の視点から見た AL 型授業の効果

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7月9日(土)、「キャリア教育とアクティブラーニングの本質に迫る」というテーマで勉強会を開催しました。

  1. キャリア教育とは何か
  2. キャリア発達とは何か
  3. アクティブラーニングがそれらとどのように関係しているのか

これらの3つについて、講演・実践発表を受けて考えを深め、参加者一人一人に自分の言葉で表現してもらうというのが会の目的です。

5名の高校の先生にご登壇いただき、キャリア教育研究会第1部〜キャリア教育とアクティブラーニングの本質に迫る〜、キャリア教育研究会第2部〜キャリア教育から考える教科学習への視座〜、キャリア教育研究会第3部〜本日のリフレクション〜、という流れですすめました。

ご参加いただいたのは高校の先生から企業を経営されている方まで様々、また神奈川県や三重県からもお越しいただきました。 教育に熱い思いを持った方々が一堂に会し、とても素晴らしい時間になりました。当分この興奮は収まりそうにありません。



これから順を追って、勉強会の詳細を記事にしていきます。

まず初めにご紹介するのは、福岡県立福岡魁誠高等学校の教頭、宮原清先生の講演内容です。

宮原先生は、キャリア教育プログラム開発やコミュニケーション効力感等の研究で文科省科学研究費助成事業に2回採択されるなど、キャリア教育の実践と研究を積んでいらっしゃる先生です。

「アクティブラーニングが発達を変える、教育を変える―キャリア教育の視点から見た AL 型授業の効果」というテーマで、この会の基調講演をしていただきました。

宮原先生のお話

平成23年1月31日中教審答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」によると、キャリア発達とは社会的・職業的自立のために必要な力を身に付けることです。「4領域8能力」というのを聞いたことがあると思います。

またキャリア教育とは、一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育のことです。

キャリア教育とは、キャリア発達とは何か、自分の言葉で言うのは難しいですよね。 中教審の定義でなく、自分の言葉でとなると私自身もなかなか出て来ません。

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キャリア発達を阻む社会環境の一つに、小型ゲーム機の普及があります。ゲームは一人でするものですよね。学校の先生に聞いても、今の子どもたちはグループをつくらなくなっています。誰かのために、グループのために何かをするという感覚がほとんどなくなってしまっています。その上、最近はさらにSNSが普及して、表面的な友達はたくさんいても、表面だけの関係しかつくれない、そんな子供たちがたくさんいる状況です。

次に、少子化で高校生が減っているから学校はどんどん宣伝をします。あれがいいぞ、これがいいぞ、と。全くキャリア教育じゃありません。進路選択が消費行動になっています。

また、コンビニやファストフードのアルバイトは、完全にマニュアル化され、自分で判断することがほぼなくなっています。

これは学校の授業にも言えます。生徒にもっとわかりやすい授業を、効果的な授業を、とやってきた結果、生徒が考えなくなってしまったと。

これが、アクティブラーニングが必要な背景です。子どもを消費者に追い込み、提供者感覚を育てない社会環境が、子どもたちを主体的・能動的活動から遠ざけています。社会がアクティブラーニングと逆方向にいっているんですね。

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昨日公表された公益財団法人日本生産性本部が新入社員に実施した、「働くことの意識」調査結果を紹介します。

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一番割合が高いのは「楽しい生活をしたい」という意識です。これはある意味消費的な感覚ですよね。一方割合が最も低いのが「社会に役立つ」という生産的な発想です。

進路がなかなか決まらないのは、そもそも友人と進路の話をしていないんですよね。LINEやSNSが広がって、友達はいっぱいいるけど深いコミュニケーションはないという状況もあるでしょう。

そうするとリアルな進路情報が不足しますし、進路適性も誰かと本気で話をしないと理解は進みません。

そこで私は、対人関係への自信が進路意識につながるのではと思い、それを測るためのコミュニケーション効力感尺度を開発しました。

高校・大学生計309名のアンケートを抽出し、因子を三つにまとめました。

多くの人と付き合うことや人付き合いに対して抵抗がないという「親和性」、対人関係を積極的に深められると感じる「積極性」、印象の悪い相手とも関係をつくれそうに感じる「高社交性」の三つです。

答えてもらう項目はこちらです。

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その時その時の感情ではなくて、その人の特性を引っ張り出せるようなアンケート項目にしています。

それと、対人関係への自信の他にあと一つ、人のために何かをするという貢献心ですね。これは進路意識だけでなく働く意欲のほうに一歩踏み込みます。

他人が喜んでいるのを見ても自分は嬉しくない、あきらめが早すぎて最後まで物事を達成しようとしない、自分で考えようとしない。つまり、貢献心、責任感、生産性がない。これが消費的進路選択につながると考えました。

そして今度は社会形成意識(働く意欲)尺度を作りました。

これも分析により、三つの因子が抽出されました。 他者のために何かをすることに喜びを感じる「貢献性」、ものごとを最後あきらめずやり遂げることに喜びを感じる「責任感」、消費者でない生産者の視点や主体的な課題解決意欲を持っている「生産的意識」の三つです。

調査をしてこの2つの尺度の相関を見てみると、人間関係に自信のある人は人のために何かをしようと思う、最後まで責任を持とうとする、ものごとを主体的に解決しようとする傾向があるということが言えるとわかりました。

コミュニケーションに積極的な生徒は、貢献心があり責任感が強い傾向にあるということです。

コミュニケーションに自信があれば、それが働く意識につながります。進路を決めたいという意欲が強まります。

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こちらは九州産業大学の、キャリア教育学会に長くいらっしゃる長須先生が示している、進路が決まらない傾向を測る尺度です。

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彼は定時制に長くいた先生で、どうやったら進路を決められるだろうかと考えあぐねているときにこの研究を始められました。

これを借りてさっきの2つの尺度と照らし合わせてみると、コミュニケーションに自信があるほど、貢献心、責任感、課題解決意欲があるほど進路を決めたいという意欲が強まることがわかりました。

コミュニケーションに自信のある生徒ほど、進路に不安を感じて動き出します。

どういうことかというと、対人関係に自信があれば人と関わりたいと思い、人と関われば情報量が増えます。そうすると不安になって、進路を決めたいと強く思います。さらにそういう人は、相関があったとおり貢献心や責任感があり、人のために何かをしたいと思っているので働く意欲が強まるのです。

これをマズローの欲求の5段階に関連付けて考えてみました。

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これを見てわかるように、尊厳欲求が満たされた自尊感情は自己実現の土台になっているんですね。つまり、たくさんほめられた人でなければ自分が何かをしたいと思わないということです。

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自己実現欲求についてもう少し掘り下げます。 あるフレンチレストランオーナーに「どんなときにやりがいを感じますか?」と聞いてみたところ、なんと「美味しかったです」は嬉しい言葉ではないと言っていました。

一番うれしいのは、お客さんが帰りながらさりげなく「今日はなんだか楽しかったね」と言いながら帰っているようすを見たときだそうです。ほめられなくても嬉しい、という中には本質的な自尊感情を超えた自己実現の感情がありますよね。

また、私は長年吹奏楽部の顧問をしているんですが、卒業式の演奏の前にはこんなことを言っています。

「明日の卒業式がんばるぞ!本当にいい演奏をしたら、先生、生徒、保護者は泣くぞ。でも、自分が演奏を聞いて泣いていると思っている人はいないからね。いろんな感情で泣いているんだ。でもそこには必ず音楽が心を動かしているという事実がある。どんなにいい演奏をしてもほめられないよ。でも泣かせることができたらよっしゃと思え!」と。

演奏に直接感謝されなくても泣かせたらそれでオッケー、というのは自己実現欲求なんですね。

何年もそうやってきましたが、ある年の卒業式の直後、卒業生の保護者の方から一通の手紙が来ました。私たちの卒業式の演奏に心動かされたお母さんからの感謝の手紙でした。これを読んで部員と一緒にわんわん大号泣しました。でも、これは自尊感情です。それでもいいんです。自己実現感情は自尊感情の土台の上にあるものですから。

じゃあ先生たちはどうでしょう。 卒業式の一風景に、生徒が群がる人気の先生、涙ながらに感謝を伝えられる先生、保護者の感謝の声がやまない先生というのがいます。

その一方で、子どもの成長を遠くから見て喜んでいる先生もいますよね。 いい仕事は必ずしも感謝を伴わないということです。

なぜ私がこんなことを言うかというと、私のカウンセリングの師匠である三川俊樹先生は、「カウンセラーの先生のおかげで私は元気になりました、と患者さんが言っているうちは病気は治っていない」と言います。

風邪でも、薬を飲むのを忘れたころに病気が治っていますよね。そういうことです。

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自尊感情から自己実現の段階に移らせるには、という話をします。

小学生の頃、適度に自尊感情を傷つけられる経験が足りないと、気が付くと幼児期の万能感が続いていた、ということにもなりかねません。

すると中学生くらいで突然それがへし折られる、ということが起こります。中学校では、学校のシステムも変わりますし。自尊心が持てない状態は決して少なくありません。

適度な劣等感経験は必要なんですね。

精神分析学者のコフートが言うことには、小さい頃の万能感がずっと続いてしまった子たちは、カリスマ的偉大さのある人物を求める傾向にあります。あの名物先生がいる学校にいきたい、とか。自尊感情が低下しているから誰かに頼ろうとするとか。

これを脱却するために必要なのは、認められているという安心感です。これはさっきのマズローの図で見ると下の方にあるものです。やっぱり下から積み上げていかないと自尊感情は育たないし、最終的に自己実現まではいけないということなんですね。

だから小中学校において、キャリア教育はとりわけ重要です。

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大阪大学の志水宏吉先生は、「生徒と先生の関係がいいと生徒の成績が向上しやすい」と言っています。そういう関係性があるとアクティブラーニングも進むんだと思います。

心理学者のチクセントミハイという人が、人が何かに完全にのめりこんでいて集中しているときをフロー経験といいますが、その8つの要素を示しています。

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このうちの7つを確実にクリアする学校の取り組みがあります。 それがアクティブラーニングにつながる授業です。

明確な目的があって、高度な集中があって、やっているうちに熱中して、時間を忘れた感覚になって、成功と失敗が明確になるテーマで、活動が易しすぎず難しすぎない。そして自由に自分たちで進めていける環境が用意されている。

そして、有意義性を重視しているのがキャリア教育です。ではどうやったら生徒たちはそれに価値があると、有意義性を理解することができるのでしょうか。

実はそれは自己実現と関係しています。

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有意義性というのは図でご覧いただきたいのですが、この位置にあたります。

社会的に意味がある、誰かのために何かをしよう、最後までやる、解決したい、という意欲が有意義性と関係していると考えています。

心理学者のシャインという人は、キャリアを選択するための基本的な視点として、したいこと・できること・すべきことの3つを挙げています。すべきことというのははやったほうがいいこと。これが有意義性と関係しています。

人との関係がよければほめられる回数も増えます。それが生産的意識につながり、最終的には自己実現欲求につながります。

このあたりをついた授業プログラムで大切になるのは学ぶ意義、何のために学ぶのかということです。 この答えを出す究極のプログラムをつくったのが酒井先生です。

ここからは酒井先生から考えるヒントを学んでください。