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「キャリア教育とアクティブラーニングの本質に迫る」 本日のリフレクション

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7月9日、講演の振り返りも残すところあと2回となりました。

順番が前後しますが、先に和田美千代先生の総括講演の記事を掲載します。

和田先生は、城南高校教諭時代に生徒主体の進路学習「ドリカムプラン」を企画開発された方です。

今回、”福岡のアクティブティーチャー”として総括講演をしてくださいました。

和田先生のお話

現在、福岡県の教育センターでアクティブラーニング推進の仕事をしております。

今日はまとめというかたちでお話させていただきたいと思います。

昨年度からアクティブラーニングについてずっと勉強していて、気が付いたことがあります。

アクティブラーニングに決まった型はありません。

先生方はよくアクティブラーニングについて、どこかに正解があるはず、正解を教えてほしい、と思っていらっしゃいますが、それは違います。私はそれを自分で考えるのがアクティブラーニングですよと言います。

でも、アクティブラーニングを起こしやすいパターン、流れのようなものはあるな、ということにだんだん気が付いてきました。

それは、インプット→インテイク→アウトプットという展開を授業の中でつくるということです。それも、逆向きの設計でつくります。

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最初に、アウトプットを設定します。今日の時間の終わりにこれを発表してもらうからね、ということを最初に予告するということです。

その予告をすると、その時間にやるべきことが生徒にとって自分事になります。これがインテイクです。

そして先生の授業をものすごく真面目に聴くようになります。インプットの質が上がるということです。

一番わかりやすい例は、謝辞を言う人は講演を“マジで”聴く、ということです。例えばいま、私が誰かを指名して、私の話したことを最後にまとめとしてもう一回話してくださいと言うとします。すると指名された人は一生懸命聴きますよね。

今日、私はリフレクションというアウトプットをしなければいけませんでした。一番最後に出番があるから、今日の話を誰よりも真剣に聴いたのは私だと思います。

これでアウトプットの予告の大事さがわかりますよね。

インプット、インテイク、そして特にアウトプットを予告するということが非常に大事だと思っています。

ドライバーズ効果というのをご存知ですか。 運転手は助手席の人より道を覚える、というものです。あれは、脳が“自分が主体者である”と判断すると活性化するからなんです。

私たちは非常にエコにできておりますから、主体者ではないとわかると、電源がオフになってスリープモードに入ります。

主体者・当事者であるとき、本気のとき、脳は活性化します。自分がなんとかしなければと思ったら、脳はガーっと動くわけです。

でも生徒が受け身だったら、お客さんだったら、もうエコモードに入ってしまいます。

私はこれに“インテイクスイッチ理論”と名前を付けました。

授業でアウトプットの場面を設定し予告をすることで、生徒の“インテイクスイッチ”が入ります。そしてインプットに真剣に取り組む。

私はこの“インテイクスイッチ”が人をアクティブラーナーにすると考えています。

また、インプットとアウトプットの間には“再構成”があります。

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例えば誰かから何かを聞いて、それを話しなさいと言われたとき、私たちはインプットしたものをそのまま100%コピーしてしゃべるわけではありません。必ず一度自分の脳を通し、インプットしたことを再構成します。

私はこの再構成こそが“考える”ということで、ここで知識が定着して学力が向上するのだと思っています。

* * * * * * * *

宮原先生はマズローの欲求5段階説を挙げられました。仲間でいたい、認められたい、ほめられなくても嬉しい、とレベルがだんだん上がっていく。そして大切なのは学ぶ意義だというふうに言われました。

(宮原先生の記事→アクティブラーニングが発達を変える、教育を変える ―キャリア教育の視点から見た AL 型授業の効果 - FORESIGHT.COM

酒井先生は、お客モデル・生産者モデルのお話をされました。

(酒井先生の記事→キャリア教育実践~CSLから今後のキャリア教育の在り方を考える~ - FORESIGHT.COM

このお客様モードというのがつまりパッシブラーナー、受け身の学習者。そして生産者というのがつまりアクティブラーナー、能動的な学習者です。

生徒をパッシブラーナーからアクティブラーナーへチェンジさせる。それがアクティブラーニングでありキャリア教育なのだと思います。

深江先生は発表の場を設定することによってよく読むようになると言われました。

発表しなければならない立場になったら一生懸命読むようになる。まさに先程のインテイクスイッチ理論ですね。

(深江先生の記事→キャリア教育から考える教科教育への視座(国語) - FORESIGHT.COM

それから守谷先生のお話。

(守谷先生の記事→キャリア発達を促す授業実践(理科) - FORESIGHT.COM

私は昨年、香椎高校の職員研修でアクティブラーニングについて講演をしました。今日はその成果を守谷先生の口から直接お話を聞けて、大変感動いたしました。

自分でするという仕掛けを授業の中でつくっていく。そして生徒に委ねる、信頼する。これが一番だなと。

全部自分が講義しないといけないと思っている先生。あれって本当は、生徒を信頼していませんよね。だから何でもかんでも自分が与えなければならないと思っているんです。

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キャリア教育にしてもアクティブラーニングにしても、何をどうやるんですか、教えてくださいということをよく言われます。

そんなことは枝葉末節です。

なぜそれをやるのかをわかりさえすれば、何をどうするべきかは絶対に自分の中から湧いてきます。

なぜ働くんですか、なぜ学ぶんですか、なぜ私たちは教育活動をしているんでしょう、教科を通してどんな力をつけたいんでしょう。

そこを掘り下げていけば、具体的に何をすればいいか必ずわかってくると思います。

最初に提示された今日の目標はこうです。

①キャリア教育とは何かと聞かれたらどう答えるか。あなたが捉える“キャリア教育”の意義とは。
②社会で求められる力もふまえて生徒たちにつけたい力、未来社会のためにいま身につけさせておきたい力とは。
③あなたが考えるアクティブラーニングとは。
これらを言語化するということ。

私は“あなたが捉える”“あなたが考える”というところがポイントだと思います。

“答申でこう言われているから、文科省がこう言っているからする”のではないんですよね。

“自分はこう思う”という自分軸をつくる、自分事で考える、ということが大事です。

それを教師の私たちが言えないのに、生徒にアクティブラーニングだ、主体性だ、自分で考えろ、とは言えませんよね。

だから、生徒をアクティブラーナーに育てる前に、私たち教師自身がアクティブラーナーになることがとても大事なことです。

* * * * * * * *

私は、キャリア教育は人生を展望させる教育、これからの人生について考えさせる時間であると考えています。

それから、生徒につけたい力は、簡単に言うと“荒波を乗り越える力”です。これからいろいろなことが起こったとき、変化に対応できる、ぶつかっていける、助け合える、そこからなんとか再生していける。そういう力をつけたいなと思っています。

そしてアクティブラーニングとは何かと聞かれたら、主体的協働的な問題解決だと答えます。

キャリア教育とアクティブラーニングの関係についてですが、私はアクティブラーニングによってキャリア教育ができると思っています。

アクティブラーニングは、問題の発見と解決に向けて主体的協働的に学ぶ学習です。主体的というのは自分からすすんでやること、協働的というのは仲間と協力して問題を解決するということです。

主体的協働的な問題解決。これは社会人として求められる姿そのものです。

主体的協働的な問題解決に必要な力を、私は簡単に“チームビルドする力”と言います。仲間となんとかチームをつくって、プロジェクトを達成していく力です。

授業の中でその力をつけていこうと考えると、授業で毎日、主体的協働的な問題解決をしなければいけない。それがアクティブラーニングの授業です。

社会人として求められる力を授業でつけるということは、教室と社会をつなげた授業をするということです。

「社会に開かれた教育課程」という言葉が新しい学習指導要領や答申に出てきています。先生方に「教室と社会がつながっていますか」「社会とかけ離れた授業をしていませんか」と問うているのだと思います。

* * * * * * * *

キャリア教育はイベント型から日常型、授業型へと進展しています。

私は、学習過程や学び方がマインドセットをつくると考えています。そしてアクティブラーニングというのは学習過程の質的な改善だと思っています。

これまでの学習は受け身で、一人で競争していました。そうすると社会人になってどうなるか。受け身で指示待ち、自分さえよければいい、というような人間になります。

これからの学び方・学習過程は、主体的協働的で、同じ“きょうそう”でも、協力して作り上げるという意味の“共創”です。

私たちがそういう授業をしていけば、生徒たちに、社会に出ても通用するような主体的協働的なマインドセットがされていくのではないかなと思っています。

これは学び方・学習過程を比べてみてもよくわかります。

今までのいわゆる講義型の学びではインプット“される”、つまり受け身です。アクティブラーニング型の学びではアウトプット“する”、つまり能動的です。

社会人になったら教えてもらうことがほとんどなくなり、自分からアウトプットしなければならない場面の連続です。そういう時にきちんとそれができるようにする教育が、アクティブラーニングだと思います。

田川高校のホームページを見ると、非常にいい、アクティブラーニングについてのまとめが出ています。

授業の最初に「内容目標」と「態度目標」を掲げるのですが、“教科の通常授業で「態度目標」に向かわせること、それ自体が立派なキャリア教育になる”と書かれています。

態度目標は例えば、私はよく「話す」「傾聴する」「質問する」「チームで協力する」「チームに貢献する」というような態度目標を掲げて研修会をします。

じゃあ授業で態度目標に向かわせればそれでOKか、それでキャリア教育ができるのかというと、私はこの3つのバランスが大事だと思っています。

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イベント型は、例えば社会人講話で将来展望を描くような体験をすること。日常型は、社会人としての基本的な生活習慣、あいさつや時間を守るといったこと。そして授業型は、主体的協働的に問題解決をする態度をアクティブラーニングでつくっていくことです。

また、教科の魅力の話が先ほどそれぞれの先生から出てきたのですが、生徒は授業・教科の中で興味関心や志向性を発見するんですよね。

例えば、私は高校生のとき「赤壁賦」の「月白く風清し、この良夜を如何せん」という一節にものすごく感動して。私たちの感覚やセンスは中国のものが母体になっているんだなあと思いました。それから私は中国文学を勉強しよう、中国文学科がある大学だ、と思って受験をしました。そして今は国語の教師です。

守谷先生のお話にあったように、理科の時間が面白いからこういう実験ができる学校を受験しよう、と自分の将来を見つけていくこともあります。

このイベント型と日常型と授業型のバランスを意識してキャリア教育を組み立てる必要があると思っています。

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新しい情報をいくつか提供します。

今度の新しい学習指導要領についての議論、最新のまとめを見てみると、アクティブラーニングは「主体的・対話的で深い学び」というふうに日本語化されています。

もちろんアクティブラーニングという表現も出てきますが、私はこの日本語化されたほうがみなさんに浸透しやすいのではないかなと思います。

それから、キャリアパスポート(仮称)というのが導入される予定です。これは、生徒たちが教科や特別活動の中で体験したことを自分で振り返って、その活動を自分史や自分のアルバム、履歴書のようにして蓄積をしていくポートフォリオです。

「子どもたちが自己評価を行うこと、特別活動を軸としつつ、教科等の特質に応じて、学習活動の一つとして位置づける」というものです。

これができると、それぞれの学校で課題研究が大流行するんじゃないかなと思っています。

また、「公共(仮称)」という、主体として社会に参画する力を育む中核的機能を担う、つまりキャリア教育を中心的に担う科目が登場します。そうすると、学校の中でのキャリア教育の担い手が、この「公共」を担当する社会科の先生ということになるのかなと思うこともあります。

そして、多面的な評価。 指導と評価の一体化というのはよく言われます。

私たちは、思考力・判断力・表現力をつけようとアクティブラーニング型の授業をしています。でも定期考査では知識技能を測ります。このギャップの中で苦しんでいる先生もたくさんいらっしゃると思います。

でも評価の方法はたくさんあり、論述やレポート、発表、グループの話し合い、作品の制作といった多面的な評価をしていく必要があります。そのために特に高校では、教員の評価者としての能力の向上をしなければならないということが言われ始めています。

①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③主体的に学ぶ意欲というのが学力の3要素です。

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受験・入試において、知識・技能は新しい評価テストで測られるかと思います。思考力・判断力・表現力の部分は、特にいわゆる二次試験、特別試験、個別選抜で測られます。そして主体的に学ぶ意欲については、活動履歴書を例えば就職先とか進学先に出し「私はこういう者です」と生徒自身が語ることで測るのだろうと思います。

では、それを高校の中に落とし込んだらどうなるのか。

知識・技能はいわゆる今までの定期考査で行なってきたように知識単発問題で測ります。思考力・判断力・表現力を測るには、これはやはり定期考査に記述式の問題が増えていかなければならないと思います。その記述をどうやって採点していくのか。それはルーブリックについて教員が勉強していかなければなりません。それから主体的に学ぶ意欲については、どういうポートフォリオをつくらせるかと各学校が知恵を絞っていくことになると思います。

でも、そのように記述問題やポートフォリオづくりをしていくと、だんだん受験のためのアクティブラーニングになっていく学校が出てくるかもしれませんね。

最後にこちら。

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もう何度も見られているかもしれませんが、各大学における個別選抜が、小論文やプレゼンテーション、集団討論、面接になっていきます。

志望理由書の中に、自分はこういう体験をしてこういうふうに思った、だから自分はそっちの方向に進んでいきたいんだということを自分の言葉で書くことができる生徒。そういう生徒をつくることが、やっぱりキャリア教育だなと思っています。

現場には、大学入試は本当にこうなるのかという疑問の声がたくさんあります。

私は、今まで通りの入試をずっとやっていくような大学は将来性がないのではないかと思います。 本当に世の中に必要とされている力、日本が国際社会の中で生きていくために必要とされている力を本気でつけていこうと思っている大学こそ、将来性のある大学なのではないでしょうか。

実際に2020年からどんなふうに変わっていくのかなと、大変楽しみにしています。

でも先生の中には、アクティブラーニングやキャリア教育に対して強い拒否感を持っている方もいます。

それはなぜかと考えると、先生たち自身がずっとパッシブラーナーとして育ってきたからではないかと思います。自分はずっと受け身の授業を受け、先生になってからの授業もそういう中で成功してきた。そんなパッシブラーニングをずっと繰り返してきた私たち教師がアクティブラーナーを育成するのは、やっぱりなかなか難しいことだなとも思います。

わかりやすく言うと、江戸幕府の御家人が明治新政府の役人を育てることと同じ。そんな新旧の価値観のずれがあります。

そこで私たち教師に求められることは、マインドセットをチェンジするということ。いかに私たち自身がパッシブラーナーからアクティブラーナーになれるかどうかです。

これを、今日来られている方からじわじわ広げていくことが大事です。