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3月3日(木)、K高校で一日かけての進路プログラムを実施しました。

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一日の流れをご紹介します。

午前には3つのプログラムがありました。はじめに事前指導として、21世紀に求められる能力について考えてもらいました。次に選択式キャリア発達セミナーを行い、最後に午前の振り返りとして「志」についてお話ししました。

午後は2つのプログラムに分かれます。1つ目は業界・学問研究ガイダンス、そして2つ目には事後指導として自分の将来・志・夢・目標と学ぶ意義を言語化してもらいました。

事前指導・午前の振り返り・事後指導は講演会形式で、弊社キャリア教育推進事業部の担当、西田が講師を務めました。


事前指導

私たちのような高等学校の進路行事をサポートする業者は、大学や専門学校等の専門の先生方におこしいただいて、高校生に大学や専門学校での学びの内容、将来の就職先等を紹介していただくのですが、ただ大学や専門学校の学び等の情報を紹介するだけでは、生徒に毒です。

わたくし西田の師匠、日本キャリア教育学会員である宮原氏は、昨今の高校生の進路選択が「レストランのメニュー選び」になっていると指摘しています。

正しい事前指導がないまま生徒に大学や専門学校の情報を与えるということ、それは、お腹が空いていない生徒に「とにかく何か食べなさい」といっているようなものです。“生徒のお腹を空かせる”“レストランに行きたい(進路について意欲的に考えたい)と思わせる”ような事前指導が必要なのです。

弊社は、この事前指導のプログラムを現在のところ7つ持っています。

  • Workshop1:自分を勇気づけてくれるような経験を持とう

  • Workshop2:働くとは?

  • Workshop3:Did you know?~これからの社会を生き抜くために~

  • Workshop4:学ぶ意義ガイダンス

  • Workshop5:ユメカツガイダンス

  • Workshop6:進路は自分だけのもの?

  • Workshop7:自分の志を言語化しよう

これらの詳しい内容は、これまでの、これからの具体的な取り組みについての記事の中でご紹介します。


これからの社会はどうなる?

初めに、ある動画を見てもらいました。この動画は、「社会はこのように変化している」ということを淡々と投げかけてきます。しかしそれがなぜ起こっているのか、というようなことは一切教えてくれません。

例えば、「2010年に需要のある仕事上位10位は、2004年にはまだ存在していませんでした。」「英語の単語は約54万語。これはシェークスピア時代の約5倍です。」ということが次々と伝えられます。

この社会の変化は一体なにを意味しているのか?生徒たちと一緒に考えました。

また、これからの社会はどうなるのか、これからの時代を生き抜くためにはどんな力が必要だと思うか、と問いかけました。

この動画を見て、生徒は「何年後か後の自分を想像して現在を生きようと思った」という感想を持っていました。

ちなみに私はこの動画が意味していることを下の図のように考えています。 f:id:yumekatsu:20160602175814j:plain




21世紀型スキル

これからの時代を生き抜くためにはどんな力が必要か?
その一つの答えとして21世紀型スキルを紹介しました。

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私はこの中でも、高校生にとって大切なのは学び方の学習、コミュニケーション、情報収集・活用力、キャリア意識の4つだと考えます。

キャリア意識とコミュニケーションが大切な理由は、キャリア教育とは何か。Foresight Act 西田将浩の考え。 - FORESIGHT.COMで述べた通り、京都大学の溝上先生の研究である「どんな高校生が大学や社会で成長するのか」や、日本キャリア教育学会会員である宮原先生の“コミュニケーション効力感”“社会形成意識尺度”に関する研究結果を参考にしたり、私のこれまで関わってきた大学生や社会人を見たりしてそう思うからです。

やはり他者と積極的に関わり他者から学ぼうとしている学生や社会人は、自分の夢を叶える力を持っていると感じます。

情報収集・活用力と学び方の学習については、先ほど紹介した動画や“シンギュラリティ”という言葉を知って、これから必要になってくる力だと確信しました。これからは誰も予測しなかったような時代・問題がおとずれます。そのため自分で問題や課題を発見し、自分で解決する手段を見出す力が求められます。“シンギュラリティ”については久留米商業高校の記事の浜崎さんのお話をご覧ください。

「ではどうしたら21世紀型スキルは身につくと思うか、答えを知りたいと思いますが、それはこのあと選択式キャリア発達セミナーで聞いてください。」というふうに次のプログラムへつなげました。


選択式キャリア発達セミナー

当社のこのプログラムは、興味のある講座を選び、教室ごとに分かれて受講する形式の講演会です。

各高校の先生方とお話をして、生徒の実態に合わせた講座を開設しています。例えば進路に悩んでいる生徒向けに3講座、進路が定まっている生徒向けに3講座、というように分けて設定することができます。

この講座では、高校生で伸ばすべき資質や能力を伝えています。伝えるだけでなく、その資質や能力がどのようにすれば身につくかを言葉にすることが目標です。

今回は「メンタルトレーニングの重要性」「想像力・発想力を磨こう」「進路選択力向上講座」「食生活の大切さを知ろう」「プレゼンテーション力」「グローカルに生きる」「モチベーションアップ講座」の7つを開設しました。

第一部と第二部があり、生徒はこの中から2つを選んで受講しました。 この記事の中でも2つの講座の内容を紹介します。


プレゼンテーション講座

プレゼンテーション講座の講師は、フリーアナウンサー&スピーチコンサルタントの後藤真弓さんです。声の出し方・話し方についてお話しいただきました。声を出す実践を多く取り入れて進めてくださいました。

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第一印象を決める要素の 約4割は「話し方(聴覚情報)」だと言われています。
何を伝えるかではなくどう伝えるかが大切、同じ内容を話していても話し方によって聞き手の持つ印象は変わるということです。

後藤さんは、第一印象の良い“伝わる”話し方には7つのポイントがあるとおっしゃっていました。伝わる声、伝わる発音、伝わるスピード、伝わる緩急、伝わる抑揚、伝わる間、伝わるトーンの7つです。

伝わる声というのは、ハリのある声です。これをつくるには腹式呼吸が必要です。お腹の動きで息をコントロールすることです。

早速実践で、お腹をへこます練習をしました。
冷たい手に暖かい息を吹きかける、風船を膨らます息を出す、吹き矢を飛ばす息を出す。

また、「はーーーーーーーー ひーーーーーーーー ふーーーーーーーーー へーーーーーーーー ほーーーーーーーー」と長い息で発声したり、「は、は、は、は、は、は、は、は ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ひ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ、ふ へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、へ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ、ほ」と短い息で発声したりしました。

次に、伝わる発音というのは一音一音をキレイに発声することです。口をしっかり開けると、明瞭な話し方ができ明るい印象になります。

「青は藍よりいでて 藍より青し」というようなフレーズを実際に声に出して、滑舌練習をしました。

最後に、伝わるスピード・伝わる緩急・伝わる抑揚・伝わる間・伝わるトーンについてです。

生徒は「私たちの講倫館高校は総合学科を持つ高校です。この総合学科の特色のひとつは、高校卒業後の進路について深く考える学習が多いということです。…」というような長い文を使って、どう話せば相手に伝わるかということを考えました。

後藤さんは「言葉を発するとき、今伝わっているかな?どうすれば伝わるかな?と常に意識することが重要です。相手への思いやりを持って分かりやすく伝えようとすればあなたの話し方は変わってきます」とおっしゃっていました。


グローカルに生きる

こちらの講座の講師は、NPO法人国際教育支援機構スマイリーフラワーズ代表、窪田広信さんです。

窪田さんは、大学生や社会人を対象とした海外留学の支援をされています。児童養護施設の子どもたちも海外に送り出し、国際教育機会の提供を通してより良い社会の実現を目指されています。

講座では“世界で活躍できるグローバル人材”についてお話しくださいました。

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窪田さんの考えるグローバル人材とは、国を超えて世界で共通する「人に好かれる特質を備えた人」であるそうです。その条件は、笑顔であること・素直であること・自分で考えて行動できることだとおっしゃっていました。

そしてこのように続きます。
「つまり、グローバル=英語が話せる人ではありません。留学して世界中で活躍している人を見ると、決して全員が英語を上手く話せるわけではありません。片言でも世界中に友人をつくり、起業し、現地に溶け込み、活躍している人は数多くいます。その人たちに共通するもの、それこそが先の『人に好かれる特質』を備えた人です。私は、これがグローバル人材なのではないかと思います。」

窪田さんは、当社の選択式キャリア発達セミナーで“グローカルに生きる”というテーマで何度もお話をしてくださっています。

グローカルとは、グローバル(Global)+ローカル(Local)の和製造語で「地球規模の視野で考え、地域視点で行動する」と定義されています。

窪田さんは先程の特質を活かして地域に溶け込み、柔軟に受け入れて適応し、且つそこに自らの独自性(自分の強みやスキル)を打ち出し活かしていくことがグローカルな生き方ではないかと考えられています。

そして最後にこのようなメッセージが生徒におくられました。

「自信はある日突然つくものではありません。様々な自分自身の経験によって積み上げていくものですから、行動なくして自信は生まれません。私は、10代20代は行動と経験によって自信を積み上げる時期だと思っています。」


生徒の感想

選択式キャリア発達セミナーを受けた生徒の感想を紹介します。

「今回のお話を聞いて自分の価値観がすごく変わりました。この長い人生の中で講師の方に出会えたことは本当によかったです。」

「夢を叶えたければ自分から行動していくことを忘れないでこれから学校生活を過ごそうと思いました。」

「自分を勇気づけてくれる経験を高校生のうちに1つでも見つけられるように頑張りたいと思います。」

「夢に向かって大切なこと、守らないといけないことを知れたのでよかったです。」

「部活でも活かせる話を聞けたので聞いたことを忘れず、何回も読み直します。」


午前の振り返り

選択式キャリア発達セミナーの後、再び生徒に一つの会場に集まってもらい、午前のまとめをしました。この時間には、私の考える“キャリア意識”についてお話をしました。

まずある動画を見てもらい、日本の抱える社会問題を知ってもらいました。その動画は、2013年には3人に1人が非正規雇用者だったという安定雇用の崩壊や、農業人口の高齢化と減少などを伝えています。

そして私は、このような社会問題に対する当事者意識がとても大事なのだとお話しました。

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上の図は“志”の構成要素を表しています。“志”には3つの構成要素があります。それは“will(したいこと)”“can(できること)”“must(しなければならないこと)”です。

先ほど大事だと言った「当事者意識」は、志の“must(しなければならないこと)”に含まれます。社会問題を自分のことだととらえることによって、自分がすべきこと、使命が見えてきます。

それぞれの仕事や学問領域で「何を学びたい(will)」と思い、「学んでできること(can)」を増やすことも大事ですが、「その領域の社会課題と、自分が解決しなければならないこと(must)」を考えることが大切です。本気で3つを求めれば、その気持ちが志に変わります。

午前のプログラムでは、「これからどんな社会になり、どんな力が必要で、どうすれば身につくのか」を高校生に考えてもらうことがねらいでした。

午後は世の中の学問や仕事を学ぶ時間です。


業界・学問研究ガイダンス

午後、メインのプログラムはこちら。

先ほどご紹介した「選択式キャリア発達セミナー」と同様、興味のある講座を選び、教室ごとに分かれて受講する形式のガイダンスです。こちらも二部構成にし、2つを選んで受講してもらいました。

この講座では、各業界・学問の内容や進路などの具体的な情報を伝えます。それぞれの業界の今とこれからを知ることで自分自身の夢や志を深化してもらうというねらいがあります。

今回は第一部で文学、経済・経営・商学、芸術・デザイン、スポーツ、看護、幼児教育、被服・ファッション、放送・音楽、医療事務、美容、動物、調理、工学の講座。

第二部で法学、観光、初等教育、栄養学、情報処理、リハビリ、声優、ホテル・ブライダル、メイク・ネイル、事務、製菓、公務員、福祉の講座を開設しました。

生徒は、「オープンキャンパスに行きたいと思った」「大学と専門学校の違いを知ることができた」「自分の進みたい進路だから、聞いていて楽しかった。もっともっと勉強して頑張ろうと思った」という感想を持っていました。


事後指導

最後に、一日の総まとめの中である動画を見てもらいました。

あらすじはこうです。
「私(このお話の語り手)の家計は、母がパートをしてギリギリの状態だった。高校生になり美大への進学を考えるようになった。しかし到底そんなことができるお金はなく、母と喧嘩をするようになった。そして「子どもを進学もさせられないなんて親失格だ」と言ったことを謝れないまま、母は事故で亡くなってしまった。その後、母が私の進学費用のためにパートの時間を増やし少しずつ貯金をしていたことがわかった。」

この動画は三潴高校での講演会でも使用しました。そのときの生徒の感想を紹介しながら、「進学できることは当たり前のことではなく、たくさんの人の支えがあって勉強や進路選択ができる。親に感謝もできない人間がいくら21世紀型スキルを身につけようが、社会には通用しない」ということを伝えました。


キャリア教育(高校生が進路選択をする上で、卒業するまでにどんな成長が必要か?そのための指導方法は?どんな知識が必要か?そのために必要な情報とは?)を15年間追究してきて、1つわかったことがあります。それは、高校生が自分の力だけで夢や志を言葉にすることの難しさです。

高校生の胸の中に、大事にしている人生観があるのは事実だと思います。ただそれを自分の力だけで自覚すること、言葉にすることは大人でも簡単には出来ないということです。

じゃあどうすればいいのか?

“自分探しの前にお手本探しをしよう”

私はこれしかないと思う、と生徒たちに伝えてきました。

この日生徒たちは、私、西田を含めたくさんの人に触れました。「この考え方いいなあ」「私はこんな考え共感できない」といった、たくさんのお手本を手に入れることができたのではないでしょうか。